研究内容

 植物培養組織・細胞の保存では、保存が困難な植物の保存条件の検討、保存可能な植物では保存後の植物体再生条件の検討、保存後の生存率を向上させるための条件の検討などの研究を行っています。 植物の無配生殖誘導と進化に関する研究では、スギナ配偶体から無配生殖を誘導させ、その過程で維管束がどのように形成されるか観察をしています。人工的に無配生殖が誘導できるということは、誘導するときの条件により維管束の発達過程をコントロールできると考え、進化初期段階の維管束を推測することを試みます。

植物培養組織・細胞の超低温保存

 植物遺伝子資源の保存は、希少植物種の保存の観点からも有用植物の原種の保存の観点からも、さらに研究に用いている培養細胞の維持管理の観点からも重要である。しかし、多くの植物種、植物細胞において保存法が確立されていない。種子や植物体そのものばかりでなく培養組織・細胞の保存の研究も重要と考えられる。

植物の無配生殖誘導と進化

 植物は、核相がnの配偶体世代と核相が2nの胞子体世代を交互に繰り返して生長、増殖している。無配生殖とは、配偶体の細胞から胞子体植物の構造が形成される現象である。シダ植物では自然環境で無配生殖がみられる種がある。また、培養系において人工的に無配生殖を誘導できる種もある。陸上植物は、コケ植物からシダ植物に、さらにシダ植物から種子植物に進化していく過程で、配偶体優勢から胞子体優勢にかわっていった。この過程で、胞子体植物体に維管束という構造ができていった。しかし、原始的維管束の構造に関する情報は少ない。

シダ植物ケラトプテリスの超低温保存と保存組織からの植物体再生

微小液滴化した植物細胞の急速凍結

絶滅危惧植物の超低温保存と植物体再生

スギナ配偶体からの無配生殖による胞子体植物の作出