研究内容

生物物理化学研究室では、 生物がつくる物質、特に高分子を最大限活用するために 生体由来物質の物理化学的性質を分析し、それらを自在に制御して有用に活用することを目指しています。

食品の物理化学分析

食品には様々な機能がある。(1)栄養補給 (2)食感に代表される嗜好 (3)生体調整機能。例えば(大雑把に言うと弱い薬のような)生理活性、などである。物理化学的特性は1〜3のいずれにも影響するが、特に2や3と関連が深い。それぞれ、下記「食感の分析、創造」や「生体高分子間相互作用の解析と制御」でより詳しく説明するので参照のこと。

食感の分析、創造

味には、化学的な味と物理的な味がある。化学的な味とは、甘い、塩辛い、などsucrose, NaClなどの含有量で決定される味のことである。一方、物理的な味は、どろどろ、さらさら、パリパリ、シャクシャク、もちもち、など食感は我々の食生活を豊かにするばかりか、おいしさの大半を支配している、と言われている。食感は、口の中で食物を噛んだ際に、歯ごたえや、舌触りで決まるが、それらはいずれも、力学的(機械的)物性が主な要素である。つまり、かたい、やわらかい、など変形させるために、どのくらいの力が必要か?などを調べることが、例えば食感の分析の一つの方法と言える。 寒天やゼリーのような食品は、ゲルと呼ばれ、99%程度は水でできて居るが、1%程度の紐状の高分子がジャングルジムのように内部で立体構造を形成しているため、水がこぼれずに形を保持する構造となっている。このような食品では、高分子間の結合強度や、結合寿命、また結合点間距離など、物理化学的特性が、ゲル全体の物性、さらには食感を支配する。 つまり、それらの物性を制御することで、新しい食感を作ることもできる。 ...続く

生体高分子間相互作用の解析と制御

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食品/高分子の熱分析

食品にとって熱的安定性は非常に重要な物理化学的特性である。例えば、チョコレートは、口の中に入れてすぐに体温で溶けて柔らかくなるものが美味しいとされる。つまり融点が低い方が商品価値が高い。しかし一方で、夏場の暑い時期においては、輸送中に溶けてしまっては意味がない。ゼリーなどでも、室温保存できず、冷蔵でないと溶けてしまう場合には輸送コストが増大することになる(衛生面の観点から冷蔵するのとは別の話)。ゼリー状のゲルが溶けたり、チョコレートが溶けるのは、それらの食品中の分子間の結合力に対して、kTレベルのエネルギーの方が上回ったと解釈することもできる。(つまり暑いと結合を切るだけのエネルギーが温度で生じる、とも言える)さらに、熱物性を精密に分析することで、例えばゲル中の、分子間の相互作用の駆動力がどのようなものであるか、エントロピー駆動かエンタルピー駆動か、協同的な構造形成なのか否か、など分子論的なメカニズムについても検討することができる。

Keyword:

  • コイル-ヘリックス転移
  • 分子間の会合
  • ΔH, ΔS
  • DSC, ITC
  • ...続く

    高分子の1分子操作と計測法の開発

    多成分系である生命現象の中で、分子論的なメカニズムを探る場合には、系を単純化することが近道である場合が多い。純度が高い試料を利用すれば済む場合もあるが、それだけでは不十分な場合、究極の単純化としては、注目したい分子を1本だけ取り出して、そこに基質を反応させたり、分子をひっぱって、2分子間の相互作用力を直接計測して見たり、形状のわからない分子を、1分子用意して直接(探針で)なぞって形状を見たり、と言ったことがあげられる。

    生物物理化学研究室では、数ナノメートル程度の穴(ナノポア)に分子を1本づつ通過させて、その際に各分子を分析する手法開発や、高分子2分子間に働く力を直接計測して分子間相互作用について詳しい分析を行ったりすることで、生体内の分子間相互作用や、食品成分が織りなす高次の現象の起源解明を目指している。 ...続く

    高分子の分離・精製

    高分子は一般に様々な特性を持つ分子の混合物として得られることが多いです。特に天然物、食品などでは非常に多くの種類の成分からなり、特定成分の生理活性や、物理化学的特性を調べるためには、それらの単離・精製方法が重要となります。また、高分子は重合度が異なる多分散系であり、例えば天然物から純粋な多糖類だけを精製しても、まだ異なる重合度(→長さ、分子量)の分子の混合 ...続く

    食品の3Dプリンタ

    各種多糖類の物理化学的特性の知見を活かして、フードインクの開発や食感を制御する食品3Dプリンタの開発を行っています。 ...続く